偽フィアンセは次期社長!?
ええい、もうこうなったら。


あたしは、その手に押されるように一歩前に出て、


「初めまして、し…周磨さんのフィアンセの、糸島仁美と申します」


ぺこ、っと下げた頭の勢いが良かったのか、巻いていたストールがべろーんと落ちてきて、それを慌てて直していると……


右隣から感じる視線。


そっと見ると、優しく、慈しむような目で課長があたしを見つめていて。


心臓が、急にドキドキしてしまった。


忘れてた。

めっちゃイケメンだったんだ、この人。


その上……


こんな優しい顔、できるんだ。


反則だよ、そんな整った顔で優しく微笑むの。



どこか悲しげにすら見えるその姿に思わず釘付けになってしまう。
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