偽フィアンセは次期社長!?
結局、当たり障りのない前文のみを送ることにして。



『お疲れ様です。
靴、確かに受けとりました。』



やっとのことで送信し終えると、何だか丸1日課長のことを考えていた自分に気がついた。



受け取った紙袋を持って、アパートに帰り、見慣れたぺたんこバレエシューズを取り出す。


それは、柔らかそうな紙に包まれていて。


取り出す時に、ほんの一瞬微かな期待をしている自分に驚いた。


例えば、課長からのメモ紙とか?


だけど、そんなものは勿論入っていなくて。


ただただ、あたしの靴が居心地悪そうにそこにあって。


当たり前のこと。


自分の車に部下が忘れていった履き潰しかけの靴を突っ返す。


その事務的な作業は、海外渡航前において、面倒だったことだろう。


迅速に返してくれただけでもありがたいんだよね。
< 172 / 347 >

この作品をシェア

pagetop