偽フィアンセは次期社長!?
まるで自分に言い聞かせるように、靴を取り出して、玄関に置きに行く。


チラッと、赤い靴が目に入って。


深くて温かくて優しい色味。一目見ただけで、その造りの美しさと丁寧さにうっとりとしてしまう。

値段が高いのには、それなりの理由がある。


……そんな靴を見てしまうと、今あたしが手にしているバレエシューズが急にみすぼらしく思えて、悲しかった。


お得に買えたし、履き心地もいいし、地味だけど結構どんな格好にも合ったから、使い勝手が凄くよくてお気に入りだったのに。


課長の隣に並ぶのは、ルブタンが似合う素敵な人。


そして、あたしに似合うのはそんなルブタンのヒールの高い靴じゃなくて、こっちのバレエシューズ。



……って、ちょっと。ちょっとってば!!


何故、そんな比較をするんだ、あたし。


落ち着いて!

そりゃそうよ、誰だって10万近くする靴と、送料込み2980円で買った靴と、並べたら どっちを選ぶか一目瞭然。
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