目のない絵描きと少女
病室を出た私は次の見舞いの品を考えながら病院の廊下を歩いていた。
ふと、ある病室が目に留まった。
立ち止まり入り口の名前のプレートを見る。
「森本悠希」一つだけ。
一人部屋か、名前からするに若い人だろう。
別に一人部屋が珍しくて気になったわけではない。
ただ…なんとなく、なんとなく。
扉が少し開いている。
気が付くと勝手に病室に入っていた。
ハッと我に返り慌てて出ようとすると開いていたらしい窓から風が入り込んできた。
目を開けられない程の強風だ。
風が収まりかけたその時と目を開けるとさっきまでベッドの周りを覆っていた白いカーテンが大きく揺れている。
そこにはクセ一つない少し長めの黒髪の少年が右手にはスケッチブックを持ち、左手はペンを握りじっと窓の外を眺めている。
よし、私には気づいていないらしい。
ならば今のうちにここから出よう、そう思った時…