蜀宮廷日記
そんな時に再開した二人であったが、お互いに忙しく、中々会うのは叶わなかった。


ある日関興は騎兵の演習を監督することになった。

騎兵ー勿論この時代は馬が機動力の一番の要因であり、それの兵である騎兵は軍の花形であった。

ハヤッ ハヤッ

馬を叱咤する。

しかし、馬も生き物である、次第にヘバってくる。けれども、名馬は粘りがあった。

馬上からの槍の鍛錬、、剣の扱い等々・・・。かなりへばる兵士も出てきた。

「こら、お前達、死にたいのか!戦場で生き延びるためには、今から訓練しておくしかないのだぞ。」



中々辛い訓練であったがなんとか夕方に演習は終了して帰途についた。

この時のもうひとりの演習担当の武将は

五虎大将軍の最後の生き残りであり、敦姫の父でもある名将

趙雲字は子龍その人であった・・・。

通常、成都の近くの演習では、城内へ入り、騎兵は一種のパレードをするのが習わしであった。


騎兵は花形であるために目立つのであり、市民たちも一種お祭りのようにしていた。


「今日の担当は子龍と安国だったのう。」


「陛下は、無茶を。確かに子龍殿と安国殿とはいえ、お忍びで外出など。」


「女官長たまには儂も息抜きしたいのだ。」

「念のため、朱雀隊の手練れを連れてきておりますから、大丈夫なはずですわ。父上も万が一はおりますし。それに・・・、ねぇ真由ちゃん。」


「え、ええ。」

敦姫と真由姫であった。

真由姫にとって、気になるのはやはり関興であった・・・。

趙雲を先頭にして、騎兵たちが城内へ入ってきた。しんがりが関興である。


「父上ー。」


敦姫は趙雲を見るなり、つい叫んでしまった。


趙雲は敦姫達に気付いたが、気付かぬふりをしていたようだった。

「敦姫、今は外出中ですよ。もう、大丈夫かな。」


女官長は心配したが、特に異変は感じられなかった。


関興が、最後尾に見えてきた・・・。


その時であった。
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