【退屈と非日常】（仮）

私は概ね友人からアヤ、若しくはアヤちゃんと呼ばれる。
「ちゃん」付けされるような可愛らしい外見ではないはずなのだが、何故かアヤちゃん呼びが優勢。まあどうでもいいのだけど。

「アヤー、数Aのこの問題、答えある？」

全くどいつもこいつも勉強の用事しかねえのかよ、と毒づきながらも振り返るとそこにいたのは見た目派手な外人顔の女の子。
私を呼び捨てで呼ぶのは彼女だけ。
外見だけはヨーロッパハーフらしく金茶のロングヘア、はっきりした顔立ちをしているというのに名前だけは至極日本的な、それでいて地味な―コンドウマサコだ。
外見だけで言えば「キャサリン」という感じなので、皆から「キャサリン」と呼ばれている。
背が高く、外人顔、グラマラス。

私は彼女に抱きつくのが実は好きだ。
誓って言うが恋愛感情ではない（今のところ）

やっぱり考え方も変わっていて、お母さんがヨーロッパ人なのにさっぱり英語が話せない。
先日英語のテストで赤点を取っていたので私が追試の面倒見てやったくらいだ。

外見と中身、名前のギャップが面白いので付き合ってても至極楽しい。
マサコの甲高い声で「アヤ」と呼ばれるのは不快じゃない。

「っていうかマサコ、あんたそれくらい例題読んでさくっと解きなよ」
「だって興味ないから、ね、アヤお願い？」

さらっというな、さらっと。
だから、お願い、とマサコに頼まれると嫌とは言えないので、次の休み時間に持ってくると約束しておいた。

「そうそう、昨日約束してた漫画持って来た。アヤの為に頑張って持ってきたのー、重かったけどアヤに読んでもらいたいから」
「ありがとー、世界史の時間にでも読むね」

こういうやり取りは大体毎日繰り返されている。
私はノートを結構真面目に取っている、数学と英語だけに関してだけ。