【退屈と非日常】(仮)
他の教科は教科書があれば何とでもなるので取っていない。
うちの学校の試験が非常に緩いものでよかったと心から思う。

曲がりなりにも友達が数人いて、その中には苦手な子がいて女ばかりだとそれはそれで人間関係も気を遣う、表面と内面が違うのが当たり前な女の人間関係は複雑怪奇である。

とりあえずそんな中でも学力的に一つランクを落としたお陰で勉強に遅れることはなかった。勉強が遅れないというだけで私を苦手とする子にも好かれた―私を無料で使える家庭教師のように利用しようとゴマすり笑顔で近づいてくるのを見るのは満更でもなかった。
何かを餌に(それがお菓子だったり、ジュースだったり、育ち盛りは口に入るものを遠慮することは出来ない)数学やら世界史のテストのヤマやらを教えて欲しいと寄ってくる。

自慢にもならないが、私は勉強が出来る代わりに人並以上に運動が出来ない。
それはもう絶望的に運動が出来ない。

だからそれをカバー出来る何かが欲しかった。

それが今回の場合はレベルを落としたことによる恩恵、学力上の優位になる。抜き打ちの小テストだろうが、予告のあるテストであろうが、なんとなく出来てしまうレベルのこの学校の学力は決して高いものを要求しない。

そんなわけで私の運動音痴について馬鹿にする人はいなかった、馬鹿にしようものなら勉強を教えてもらえなくなる、そういう空気があった。
ある意味自分の秀でたところでちやほやされるのは楽しかったけどつまらなかった。適当にやってれば出来る勉強は面白くもなんともないし、興味もない。
だからと言って運動が出来るわけではないので、そっちは出来ればやりたくない。

友達は大事、でもそれ以外はそうでもない。
別に向学心があるわけでもない、どちらかと言えば怠け者。
ここが女子校で、女の園だからではそうなのではない。

私は自分自身がそんな無秩序の中に溶けていくのをよしとしていなかったのかもしれない。
じゃあどうすればこの「つまらない」という思いは薄れるのだろう、ゼンマイ仕掛けのお人形のように毎日を繰り返す私は考えた。

学校に面白味を見出せないなら、別の世界を知るのはどうだ。
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