太陽の家
…何となく、わかってた。

クモが、ユキに向ける視線の意味も。

クモが、時折自分に向けてくる、憎悪に近い視線の意味も。

わかってた。

わかってたけど、心のどこかで、あり得ないと思ってた。



「あ」

夕方。

イモ子が家の玄関に入ると、ちょうどユキと鉢合わせになった。

「…………………」

今朝のことを気にしてか…少し、顔を伏せられた。

「おはよ………てもう夕方か」

イモ子は気にしてる事を悟られないよう…無理して、二カッと笑ってみせた。

「うん」

ユキも、少し安心した笑顔を見せた。

「どっか行くの?」

「うん。アイスまた食べたくなったから、買ってくる」

「そっか」

ユキはイモ子のスケッチブックに目をやった。

「…あ、デッサン描けた?」

「うん、大体。完成したら見せるね」

「楽しみだなー。そうだ、アイス何味がすき?おごるよ」

「えーいいよ」

例え、アイスでもおごってもらうのは気がひける。

「遠慮すんなって。モデルにしてくれた、御礼ってことで」

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