極彩色アリス

Once upon a time


某所某日、某時刻。

某ビルの屋上に集められた七人の男女。
強い風に髪や衣類を靡かせながら空を見上げている。
私もそのうちの独り。

車の騒音や、風の轟音。
バタバタと服がたてる音。
今にも飛ばされてしまいそうな小さな子も、しっかりと自分の足で立っている。

耳障りな音が溢れるなか、普通なら聞こえない秘密の声が聞こえてくる。
微かで、周りの雑音に掻き消されてしまいそうな寂しげな声。
でも…、頭に直接語りかけてくるようで、聞き漏らすことはない。

私以外の皆も聞こえたのか、見上げていた空から視線を下ろした。
その先に居たのは……、幼い少女。

ふわふわなボブヘアが愛らしい印象を与える。
バルーン型のワンピースとお花のついた真っ赤なパンプス。
人参のポーチを肩から下げていて、とても可愛らしい。

顔を覆う兎の顔の仮面が無いなら、普通の女の子だったに違いない。


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