10回目のキスの仕方
* * *

「うわぁ…大きな水槽…。」
「奥の水槽にジンベエザメがいるって。」
「ジンベエザメって大きいんですよね?」
「確か…。俺もあんまり詳しくはないけど。」

少しずつ和らいでいく緊張。始まる前はドキドキしていたけれど、始まってしまえば楽しい。時折触れる手に、少し緊張が戻ってくる瞬間はあるけれど。

「カワウソがいますよ!ほら!」
「うん。」

カワウソは水槽ではなく、上から覗く形の柵になっていた。ごろんと腹を出しながら、背中を木にこすっているカワウソが2匹もいる。

「ちょっとぽっちゃりさんですね。」
「平和ボケって感じ。」
「仕方ないですよ、水族館は平和ですから。」

ぽちゃんと水に飛び込むカワウソ。泳ぐと可愛い、というよりはむしろ少しかっこいい。

「この先はアシカ、アザラシ、ラッコ、イルカと続くって。」
「イルカもいるんですね!ますます楽しみです。」

思わず足早になる。背後からすっと手が掴まれた。

「え…?」

繋がれた手。そこから伝わる温もりが恥ずかしくて頬が熱い。

「…あんまり早く行かないで。はぐれる。」
「えっとあの…ごめんなさい。」
「行こう。」
「はい。」

手も熱い。恥ずかしくて、でも嬉しい。その嬉しさに笑顔になる。

「…何笑ってるの。」
「…嬉しくて、つい。それと…。」
「なに?」
「同じでほっとします。熱い手も、赤いほっぺも。」
「っ…ますます悪化するから…それ以上はパス。」
「ご、ごめんなさいっ!」
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