10回目のキスの仕方
「え…?」
突然のことに驚いた拍子に振り返った。その先にあった圭介の表情は、美海が今までに一度も見たことのないものだった。
「…お、つかれ、さま。おやすみ。」
腕を引かれた手が離れたと思ったら、頭の上に乗った。ぽんぽんと小さなリズムが頭の上で刻まれている。数回撫でたその手が離れ、圭介が美海に背を向けた。パタンと圭介の部屋のドアが閉まる音が聞こえても、美海はその場から動けなかった。
「…熱い…。熱すぎる…。」
心臓がどくどくしている。顔は熱い。今回は頭のてっぺんまで熱いときた。完全に美海はオーバーヒート状態だ。圭介が触れたところだけが異常に熱を帯びている。
「…眠れない、絶対眠れない…。」
そんなことを呟きながら、美海は一つ一つの階段を上っていった。
* * *
(…言うこと考えてから引き止めろよ…。)
しどろもどろになりながら、なんとか言葉を言い終えた自分が彼女にどう映ったのか、それだけが気がかりだ。
それにしても、やはり彼女は優しすぎると圭介は思う。自分が招いた行動や言動に涙するくらい傷ついているのに、それでも許すという言葉を使わずに許している。帰り際に見せた笑顔に、どれだけ自分の罪悪感が拭われたか彼女はきっと気付いていないのだろう。
部屋のドアを閉め、鍵をかけてからドアに背をもたれかけた。ふぅーと長く息をはいて、どうにか心を落ち着けようとする。彼女の腕を引き止め、彼女の頭に触れた右手を見つめる。
「いきなりなにやってんだよ…。松下さん、絶対びっくりしてるし。」
柔らかい髪、そして華奢な腕の感触が手から離れてくれない。心臓の鼓動が気になる程度にはうるさい。これは、彼女の笑顔を見たときにも少し似た鼓動のリズムだ。
「…あれは、ちょっと、可愛かった。」
松下美海は、時々目が離せなくなるくらいに危なっかしい、というのが今までの圭介の見解だった。それに今日はもう一つ付け足すことにする。
松下美海は、時々どうしようもないくらいに可愛いときがある。
突然のことに驚いた拍子に振り返った。その先にあった圭介の表情は、美海が今までに一度も見たことのないものだった。
「…お、つかれ、さま。おやすみ。」
腕を引かれた手が離れたと思ったら、頭の上に乗った。ぽんぽんと小さなリズムが頭の上で刻まれている。数回撫でたその手が離れ、圭介が美海に背を向けた。パタンと圭介の部屋のドアが閉まる音が聞こえても、美海はその場から動けなかった。
「…熱い…。熱すぎる…。」
心臓がどくどくしている。顔は熱い。今回は頭のてっぺんまで熱いときた。完全に美海はオーバーヒート状態だ。圭介が触れたところだけが異常に熱を帯びている。
「…眠れない、絶対眠れない…。」
そんなことを呟きながら、美海は一つ一つの階段を上っていった。
* * *
(…言うこと考えてから引き止めろよ…。)
しどろもどろになりながら、なんとか言葉を言い終えた自分が彼女にどう映ったのか、それだけが気がかりだ。
それにしても、やはり彼女は優しすぎると圭介は思う。自分が招いた行動や言動に涙するくらい傷ついているのに、それでも許すという言葉を使わずに許している。帰り際に見せた笑顔に、どれだけ自分の罪悪感が拭われたか彼女はきっと気付いていないのだろう。
部屋のドアを閉め、鍵をかけてからドアに背をもたれかけた。ふぅーと長く息をはいて、どうにか心を落ち着けようとする。彼女の腕を引き止め、彼女の頭に触れた右手を見つめる。
「いきなりなにやってんだよ…。松下さん、絶対びっくりしてるし。」
柔らかい髪、そして華奢な腕の感触が手から離れてくれない。心臓の鼓動が気になる程度にはうるさい。これは、彼女の笑顔を見たときにも少し似た鼓動のリズムだ。
「…あれは、ちょっと、可愛かった。」
松下美海は、時々目が離せなくなるくらいに危なっかしい、というのが今までの圭介の見解だった。それに今日はもう一つ付け足すことにする。
松下美海は、時々どうしようもないくらいに可愛いときがある。