10回目のキスの仕方
「あと2こだっけ、試験。」
「あ、えっと…はい、そうなんです。」
「順調?」
「…それが、そうでもなくて。」
「なんか…意外。」
「え…それはどういう…。」
「松下さんって計画的に準備しそうな感じだから。」
「そ、そんなこと…ない、です。はい…。」
「突然やけに小声。」

 小さく落ちた圭介の笑いに、とくんと心臓が跳ねる。玲菜と福島との女子会以降、もやもやする気持ちが全くなくなったわけではない。聞きたいことは沢山あった。だが、それを口にする勇気は今の美海には微塵もなく、口にしてよい関係なのかもわからなかった。美海が少し顔を上げると、圭介と目が合った。

「ん?」
「い、いえっ!大丈夫です!」
「松下さんの大丈夫はアテにならないって学習した。」
「そんなことないですよ!大丈夫です!」
「焦ってるときは尚更怪しい。」

 圭介がそう言うのも仕方のない話ではある。実際のところ、酔っ払った自分を送り届けてもらったり、部屋まで運んでもらったり、病気の看病に来てもらったりと何かにつけてしてもらってばかりである。

「…なんか、すみません。」
「なに?急に。」
「いえ…あの…色々思い出したら私、浅井さんに迷惑をかけてばかりだな…と…。」
「そう?俺はそんな風に感じたことは一度もないけど。」

 初めて出会ったあの日から感じていたが、圭介は優しい。その優しさに何度も助けられてきた。自分では説明できないくらいに苦しい思いをしたこともあったが、それ以上に嬉しい気持ちにしてもらったことがある。それは全て圭介が関わっていた。4月からまだたったの数か月。ただ、その期間を短いと思うには無理があるくらいにたくさんのことがあった。

「…松下さん?」
「はい?」
「…夏休み、楽しみだね。」
「はいっ!」

 美海は満面の笑みで返す。それに応じて圭介の目と口が優しく緩んだ。そんな時、丁度図書館に到着した。
< 78 / 234 >

この作品をシェア

pagetop