レオニスの泪
「逃げ道なんてあるわけないじゃないですか。作れるわけないじゃないですか。」
神成は、悪くない。
何も、悪くない。
でも、どうしてか。
この人と話していると、自分の感情が。
抱えていたものが、出てきてしまう。
ー『祈は、いいよ。出来るから。』
いつだったか。
言われた言葉が蘇る。
『祈は一人でなんでもやっていけるじゃん。だけど、この子は無理なんだよ。俺が居ないと。』
この手の言葉を掛けられるのは、一度や二度ではなかった。
職場でも。
『葉山さんは、それでも、出来るからいいわよ。あの人は出来ないのよ。』
苦しくて仕方なくても、手を抜くことができず、かといって、本当に平気な訳じゃない。
「自分はか弱いって、いう人の方が…出来ないっていう人の方が、いつだってそのツケを周りに肩代わりさせていくじゃないですか。自分が一番辛いから大変だからって、周囲の一人一人がどんな思いでやっているのかも知らない癖に。」