レオニスの泪





「逃げ道なんてあるわけないじゃないですか。作れるわけないじゃないですか。」



神成は、悪くない。



何も、悪くない。


でも、どうしてか。


この人と話していると、自分の感情が。


抱えていたものが、出てきてしまう。







ー『祈は、いいよ。出来るから。』



いつだったか。


言われた言葉が蘇る。




『祈は一人でなんでもやっていけるじゃん。だけど、この子は無理なんだよ。俺が居ないと。』





この手の言葉を掛けられるのは、一度や二度ではなかった。



職場でも。



『葉山さんは、それでも、出来るからいいわよ。あの人は出来ないのよ。』



苦しくて仕方なくても、手を抜くことができず、かといって、本当に平気な訳じゃない。





「自分はか弱いって、いう人の方が…出来ないっていう人の方が、いつだってそのツケを周りに肩代わりさせていくじゃないですか。自分が一番辛いから大変だからって、周囲の一人一人がどんな思いでやっているのかも知らない癖に。」


< 157 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop