レオニスの泪
ー早く、さよならしないと…この場を去らないと。
思いは急るのに、足が地にくっついてしまったかのように動けない。
「いや、そうじゃないか。周りからは強く見えるだけで、本当は弱いんだ。」
さわさわと、風が吹く。
神成が、一体何を言おうとしているのか、見当もつかないが、視線が、絡まる。
揺らぐのを、許してくれない。
「周りの期待に応えるために、強く見せる努力をしているけど、あるいはもしかしたら自己暗示をかけているのかもしれなけどーライオンだって泣く時が、あると思わない?」
何も言えない私に。
「誰だって泣く場所は必要だよ。逃げ道も作っておいてあげないと。」
神成の声が。
言葉が。
響いて、染みて。
狼狽える。
「…だったら、どうしろって言うんですか。」
振り絞るようにして、漸く出てきた私の声は、掠れて震えている。
「何もかもわかったような事、言わないでください。」
本当は、言いたくもない。
黒くて、どろどろとした、押し込んできた感情。