レオニスの泪

そうして、一週間経った今日。


ー本当に来るのかな。


変な緊張が身体を走る。



ーていうか、行くのか自分。


あんな滅茶苦茶な提案を受け容れるというのか。


そもそも、神成に何一つメリットがない。




ということは。



ーお金、払うべきなのかな?



現金手渡し?


家は知っていても、連絡先は結局知らないし。


ーやっぱりからかわれただけかなぁ。



しかし、神成は誰かをからかうタイプではなさそうだ。





ーでもなぁ。




コル・レオニス、つまり『獅子の心臓』においての一連の運びは、からかいに含まれる気がしている。


あの後口惜しくて、調べてしまった自分にも呆れているけど。



ーどうしたらいいんだろう。



項垂れて、ステンレスの台と睨めっこしているとー




「あらぁ、森さん!久しぶりじゃない?!」




笹田の甲高い声が響いて、我に返った。



ーげ。招かれざる客。



隅で肩を竦ませて、不織布を洗いに行こうとした矢先ー


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