レオニスの泪




予報では、雨が降るなんて言っていなかった。

ハズレの空は、この時間帯、ほぼ眠りについている人達には関係のないことだろう。

しかしー




「…待ってたり…しないよね…」




神成は、どうしているだろうか。

果たして、先週の約束を果たしに、あの公園に来たのだろうか。


突然の雨だ。


万が一来たとしても、帰ったに違いない。




ー本当に?




雨水に叩かれて、一気に冷え込んだ窓に額をくっつけながら、形容しがたい思いに駆られる。

雨はいつから降ってたんだろう。



「っっ」



いてもたってもいられなくなって、直ぐに鍵と携帯を引っ掴んで家を出た。




ー馬鹿かな、私。



階段を駆け下りながら、自分にまた、問い掛ける。




ー来なかったかもしれないのに。



きっと、帰ってるに違いないのに。


だって、もう約束の時間から2時間も過ぎてる。


なのに、どうしてか、いるかもしれないと思うなんて。



こんな時間に、こんな大雨の中、女一人で、傘差して疾走してるとか。



ー馬鹿以外、ないでしょ。


< 168 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop