レオニスの泪
長靴を履いてくればよかったと思ったのは、水溜まりを踏んでしまった時。
排水が間に合わない程の雨相手に、道は小川のようになっている。
「ほんと、なんのなのよ、この土砂降りっぷり…」
視界すら濁る雨粒の多さに、口を開けば、中にそれが入ってきた。
公園は走れば直ぐだ。
適当な所から中に入り、神成の姿を捜す。
視線を走らせながら、自分の内側にも雨のような言葉の羅列が降りしきる。
いないだろう。
いるわけがない。
こんな夜中に。
こんな天気の時に。
こんな自分の為にー
そこまで思った所で、思考がパタリと停止して、耳障りな雨音がボリュームを下げた。
他よりも、一際大きな桜の樹の下。
そこにあるベンチに腰を下ろす青年が、雨を払おうともせずに、真っ暗な空を見上げている。
少しは雨宿り出来るのかもしれないが、葉を伝って滴るものは避けようがない。
ー嘘。
自分の目を、疑った。