レオニスの泪
先週歩いた道を、同じ人とまた歩いている。
「…傘、入りますか…」
迷った挙句、ややなで肩の背中に声を掛ければ彼は振り向いて。
「僕はいいよ、この位なら平気。ありがとう。」
纏う雰囲気と同じくらい柔らかく答えた。
「…いえ」
傘を差すのを迷う程の小雨だった為、自分もそれに倣うことにする。
隣に並ぶのは気が引けて、やや斜め後ろに歩くけど。
「…あの」
沈黙もいたたまれずに、口を開いてしまう。
すると彼はまた振り返る。
ーう。
その大きな目で、何?というように私をじっと見るものだから、柄にもなく、緊張して、一瞬言葉に詰まった。
「……あの、今1時過ぎてますよ…」
「そうだね。」
「…どうして待ってたんですか。来ないとか、思わなかったんですか。」
約束は23時だったのに。
雨だって、降っていたというのに。