レオニスの泪



「だって僕言ったでしょう?祈さんが泣く時、付き合ってあげるって。」


「い、言いましたけど!私は行くなんて言ってなかったじゃないですかっ。」


「でも来た。」



「っ…」



そりゃ、そうだけど。そうなんだけど。

返す言葉が見つからない私を見つめながら、神成がふいに、ふ、と笑った。



「僕が、勝手に待ってるだけだから。祈さんは来ても来なくても良いんだよ。」



ーだから、どうしてそういうことを、そんな簡単に。



胸が勝手に高鳴って、即座に突き落とされる。


自分の中で、相反する感情がぶつかりひっぱって、苛々してくる。



「…ただの患者相手に、ここまでしていただく理由がありません。」



なんとか平静を装って、できるだけ冷ややかに言い放った。



まだ濡れる髪から、雫がぽたりと彼の頬を伝う。




「…理由、か…」



繰り返される自分の言葉。


神成の静かな目は、何を考えているのか、やっぱり読み取ることが出来ない。



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