レオニスの泪
「…あの人が、、訪ねていったんじゃないかしら…」
真夜中の病院の待合室で、朱李の母親の君枝が蒼ざめた顔で身体を抱え込むようにしながら、呟いた。
「…あの人って…」
「あの子の、、父親…」
はっとして、俯いていた顔を上げると、彼女は苦しそうに顔を歪ませる。
「教えたんですか。」
「最初は断った!」
自分でも冷えた声が出たのが分かったが、余りに考えなし過ぎる。
案の定、君枝は少し声を荒げた。
が、直ぐに俯く。
「……大丈夫だと思ったの。結婚したことをどこかから聞きつけてー御祝いをしたいって…自分は、悪いことを今まで散々してきたから、だから、謝りたいって…」
身体も不自由だから、玄関先ちょっと話す位だろうと思った、そう君枝は続けた。
ー何て事を。
誰もいない大きな椅子に、二人だけぽつん、と座ったまま、一人は泣き崩れ、僕は愕然として、声も発せなかった。