レオニスの泪




コース料理なのだが、お品書きを見てみると、その多さに驚く。

持ち帰りも可としている、というより、殆どの客が持ち帰らざるを得ない程の量らしい。

お子様用のメニューも勿論あるが、お子様と付けるには恐れ多い位のコース料理なのだ。

「うなぎのささまきってなぁに?どんなの???」
「見たら分かるよ。」

慧は聞いても分からない名前の料理に興味津々だ。
お品書きを読み上げては、これなんだぁ、あれなんだぁと訊いてくる。


「――よく、来るんですか?」


女将さんが料理を運んでくる前に、部屋から出て行った――慧の何々攻撃も落ち着いた――所で、向かいに座る神成に訊ねる。

和室ではあるが、掘りごたつになっていて、テーブルのように足を延ばすことが出来た。


「うん。時々ね。ここ、コースしかないんだけど、昔の誼(よしみ)で仕事帰りなんかに寄ると、酒と軽い食事を出してもらうんだよ。」


「知り合いだって言ってましたもんね。」


話しながら、そういえば、ここのご主人――つまり神成の知り合い――に、紹介してもらうまでもなかったな、と思った。

何故なら、ご主人が、何も訊かなかったからだ。


「大学の時の同級生なんだ。」
「――へ?」
「ここの店主。」

そこまで言われて、思考が若干彷徨い出ていた私は、ハッと我に返る。

「あ、そうなんですか。医学部――??」
「違うよ。あいつとは別だったんだけど、サークルで知り合ったんだよ。」

神成のくだけだ口調に、喜んでいる自分に気付く。
学生時代の神成が垣間見れたような気がしたからだ。



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