レオニスの泪

ぱっちりと大きな目を開けて、きょろきょろと辺りを見回す慧。

涙はすでに止まっているのだが、溜まっていたものがポロリ頬を伝って落ちた。



「…………ママ?」



寝呆けていて、意識がはっきりしないまま、慧は私を見つめる。


「どうしたの?嫌な夢でも見たのかな?」


部屋の時計は1時を少し過ぎた所。

生まれた頃よりもずっと重さを増した慧に優しく訊ねると、慧はぼんやり頷いた。


「なんかね、、真っ暗なんだけど…大きな怪獣が僕の後ろで息、してるの。僕…逃げようとして走るんだけど、上手に走れなくて。とっても……怖かった。ママ。」


夢の説明をして、私を呼んだと同時に、慧はぎゅっと抱きつく。



「そっか。怖かったね。でも、夢だったんだね。良かったね。」


「うん」


顔を埋めているせいで、慧の声がくぐもって聞こえる。



「何か飲む?」



訊けば、腕の中で慧が首を横に振ったのがわかった。



「じゃ、もう眠れるかな。」



ポンポンと、小さな背中を優しく叩きながら言うと、慧が顔を上げて。



「ママ…手、繋いでくれる?」



上目遣いに、不安げに問うた慧に、私は笑って頷いた。
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