レオニスの泪
並んだ二つの布団。
熱の高い手を、自分の手の中において横になった。
隣からは、直ぐにすぅすぅとかわいらしい寝息が聞こえ、私は仄暗い天井を見上げた。
慧の騒動で一時中断した思考が蘇ってくる。
ー『五月蝿いね。』
考えないようにしたいが。
ー『少し、休憩しようか?』
この2つの声が似ていることが。
どうしたって、気になる。
なぜなら、彼は私の主治医なのだ。
ーだから、声が似てるだけだって。
打ち消して、呼び戻されて、打ち消しての繰り返しだった。
ーでも、自信ない。
明日は、2回目の受診なのに。
自分は動揺せずに、彼を前にできるだろうか。
ーだから、違うんだって。違う人だって思えば良いんだって!
堂々巡り、悪循環だ。
ーあー、もう!!
思い切りタオルケットを被って、髪をぐしゃぐしゃにしたい衝動に駆られたが、繋いだ先の慧の手の為に、なんとか思い止まった。