レオニスの泪
「どうぞ、気にせず診察を進めて下さい。」
どうぞどうぞ、と掌を彼に向けて促すけれど。
「診察を進めてって言われたってねえ…そんな不信感有り有りの態度では難しいよね。何があったの?」
「な、何もないです。別に。」
「言いたくないなら無理にとは言わないけれど。」
頑なな私の態度に、観念したかのように溜め息を吐いて、神成はカルテを手に取った。
「あれから、少し時間が経ってしまったけど、どう?本当は二週間のスパンで来て欲しかったんだけどね。」
私の仕事の都合上難しいと伝えて、一ヶ月に一度の診察にしてもらったのだ。
「相変わらずたまに、でますけど。ひどくなっている感じはしないです。呼吸の仕方も教えていただいたので、大分楽になりましたし。」
「夜は?眠れてる?」
「あー…」
「眠れてないのね。」
「…はい」
睡眠に関しては、むしろひどくなっているような気はしていた。
ただ、これを言ってしまうと、薬を出されてしまうんじゃないかという懸念があって、あまり言いたくなかった。