レオニスの泪
「気分転換に外歩いてみたりとか、できないの?小さいお子さん居るから無理かな?」
内心ギクっとした。
神成は何ともなしに訊いたのだろうが、私にはもう昨夜のことを言っているようにしか思えない。
「あ、、、んまり、眠れないと、たまに、そこらへんを散歩したりはしてます。子供が眠ってからですけど。」
「そうなんだ。それで、少しは良くなる感じある?」
「はぁ…まぁ…気休め程度ですけど」
昨日なんかは逆に目が冴えてしまって、眠るどころじゃなかった。
「そう。歩いてみて逆効果になることもある?」
「ありますよ!」
つい、握る掌に力が籠もる。
「どんな時?」
「静かな夜は良いんですけど…変な人に出くわしちゃった時とか、怖い思いしちゃった時とか。」
「そうだろうね。で、昨夜は誰に出くわしちゃったの?」
「そりゃあなた…!!」
指差した所で、しまった、と思った。
眼鏡越しの大きな目は静かで、その唇は少し口角が上がっていて、笑っているように見える。
それが、めちゃくちゃ恐い。