バレない嘘をついてよ。

「梓、大丈夫⁉︎ 」

「……うん」



乗り終わった後、
私はゆっくりと歩きながら、梓達の方に向かった。



やっぱり乗らなければ良かった……。



「カズ、マヤ。俺、少しこいつの様子見とくから遊んで来いよ」



と言って私の肩を支えながら歩き出す。



「大丈夫だよ、叶も遊んで来なよ」

「いつから叶って、呼ぶようになったんだ? 」



冗談ぽくいう叶。



「……てか、本当に大丈夫かよ? 」

「少し休ませて……」




近くにあったベンチに私は座った。




「家まで送る」

「大丈夫……」



って言ったけど、叶は私を無理矢理おぶった。



「おろしてよ! 」

「暴れるなよ‼︎ ……少しぐらいは甘えろよ、バカ」

「甘えるってバカじゃないの……? 」




叶の匂い、知ってる。
どこかで嗅いだ覚えがある。



何だろう?
思い出せない。




「なぁ、覚えてるか? 」

「えっ、何を……」





”思い出してはいけない”

そんな気がした。


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