【完】向こう側の白鳥。








誰が聞いても、同じ部活の人に向けられた何気ない言葉だと思うだろう。



私だって、自分じゃなきゃそう思う。





でも今日ばかりは……。





先輩が、私に「会いたい」と言っているように聞こえてしまった……。





「待ってる。」



そんな想いを感じた一言。





自意識過剰なのかも。



きっとそう。





鼓動が早いまま、貰ったばかりの白い帽子を胸に抱きしめる。



鞄に入っていたせいか、ほのかに香る先輩の香り。





先輩の毒牙にかかったかのように、私はそのまま何もしないで帽子を抱きしめていた。





さっきまで一ノ宮先輩のいた隣が、酷く寂しい。








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