幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
けれど、怪我のせいか、刃は衝突した呪符を斬ることが叶わず、はじかれてしまった。
副長の手から、刀が回転しながら空に飛んでいく。
そして、自由になった黒い呪符が、副長の胸にぶち当たった。
「ぐあああああっ!!」
聞いたこともない、副長の悲鳴が耳を貫く。
呪符は黒い闇を放ち、それに副長が飲み込まれていく。
「土方さん!」
「副長!」
平助くんがもののけの間からなんとか出てこようとしてる。
あたしも腹の痛みをこらえ、なんとか立ち上がった。
副長を助けなきゃ!
「どけぇぇぇぇっ!!」
総司は叫び、両手で持った刀を持ったままぐるりと回転し、周囲を囲む敵に一度に傷を負わせた。
包囲が緩んだそのすきに、全力で副長の元へ駆ける。
あたしもその後に続いた。
「こんなもの……!」
総司はひざまづくと、弓形になった副長の体から、力任せに呪符を引きはがそうとする。
バリバリと雷のような音がして、闇が総司の手に傷を作った。
何て強力な呪符なの?
あたしは斉藤先生に譲られた護符を取りだす。