幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「お願い!」
自分の霊力を込め、呪いの力を消すように念じた。
二つの力がぶつかり、手から全身に痛みが走る。
それでも全力で霊力をぶつけると、闇は少しずつ収束し、消えていった。
呪符がはらりと地面に落ちる。
「絶対に許さない!」
いつの間にか敵の包囲から抜け出した平助くんが叫び、白い弾丸となって忍に飛び込む。
けれど忍は別の呪符を取り出し、一瞬で自分の周りに結界を作ってしまった。
それに激突した平助くんが弾き飛ばされると、忍は手から黒くて丸いものを取り出し、足元に投げた。
「煙幕だ!」
あたしが叫んだ瞬間、忍の周りに白い煙が立ち昇った。
逃げられる……!
再び平助くんが飛び込もうとしたけど、一瞬遅かった。
煙が消えたころには、忍はきれいさっぱり姿を消してしまっていた。
「くそっ、汚いぞ!」
平助くんは誰もいない空に向かって叫んだ。
その間にも、残った敵と味方の撃ちあいの音が響く。
「土方さん、土方さん!」
総司が何度も名前を呼ぶけど、副長は気を失ってしまったみたいで、目を覚まさない。