幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「なに?」
副長を守るように、総司がすぐに立ち上がる。
あたしと平助くんも、副長の周りを囲んだ。
「頭領、私です」
聞き覚えのある声がして、夕闇から背の高い男が現れた。
それは、人の姿をした銀月さんだった。
「銀月……なにかわかったのか?」
銀月さんは流山の一件以来、新政府軍の元に投降した近藤局長の行方を追ってくれていた。
彼がここにいるということは……。
みんなの間に、緊張が走る。
銀月さんは近くまで来ると、副長に向かって一礼した。
「挨拶は省略させていただきます。結果から、完結に報告します」
彼は重々しく口を開いた。
「近藤殿は流山で投降したのち、板橋へと連行されました。
そこにいた敵の中に、彼の顔を知っていた者がいるようです」
どくんどくんと、自分の心臓が鳴る音が聞こえるような気がする。
大久保大和と偽名を名乗った局長が、実は新撰組の近藤勇その人だと知っている人物が敵にいた。
ということは……。