幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「このままでいられるか!首だけでも、取り返してくる!」
総司は刑場に向かい、手をのばす。
けれど、他の二人に止められ、身動きはとれなかった。
「離せえっ!先生……近藤先生……!」
その瞳からは涙が溢れ、汚れた頬を濡らしていた。
気持ちはわかる。
あと少しで、一緒に逃げられると思ったんだ。
あたしだって辛くて苦しくて、どうにかなってしまいそう。
幼いころからの心の支えを失った総司の悲しみはきっとそれ以上で、あたしなんかには計り知れない。
だけど、こんなところで敵に捕まるわけにはいかないんだ。
「総司、行こう」
「楓……お前、悔しくねえのかよっ?」
「悔しいに決まってるじゃないか!」
大声で怒鳴ると、総司は眉をひそめて口をつぐんだ。
「悔しいよ、悲しいよ。でもここでまごまごしてたら、あたしたちの命だって危ないんだ」
「でも……」
「でもじゃない!副長があんたの帰りを待ってるんだ。あたしは殴ってでも引きずってでも、あんたを連れて帰るから!」