幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「俺の体も治らねえかな」
総司の体は前より痩せてしまったけど、まだうっすらと剣術で鍛えた筋肉を残していた。
「治ると思って入ってれば、本当に治るかもよ」
「ああ……そんな気がしてきた」
総司は気持ちよさそうに目を細めて言うと、不意にこちらを見つめる。
「気分がいいから、ちょっと触ってやろうかな……」
そう言って、何もつけていないあたしの肌に手を伸ばす。
他の湯治客も来るかもしれないのに、こんなところで……。
「ダメ、絶対!」
「大丈夫だって」
「何が大丈夫なの?」
あたしは急いでお湯から上がると、ぺたぺた走って脱衣所まで逃げ込んだ。
「なんだよ、いいじゃねえか。嫁に触って何が悪いんだよ」
総司は名残惜しそうにお湯から離れ、こちらを追いかけてきた。
手早く体を拭いて着替えているのに、全裸で現れるな!気が散る!
そりゃああたしだって若いし、本当に嫌かと問われればそうでもないけど。