幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


先の王政復古で京都守護職が廃止され、新撰組は幕府に伏見鎮撫を命じられた。


つまり、京の都ではなく、今度は伏見の治安の維持をしておくようにということ。


もし薩長軍と戦闘になるとすれば、伏見がその最前線になるだろうと考えられているからだ。


そして影で、人に害をなすもののけの類の抹殺という任務は引き続き負っていた。


「とうとう戦になるのかなあ……」


祝言の翌日、気が抜けたあたしは総司の部屋でお茶を飲み、ふうと息をつく。


少し前、上様は二条城を出て、大阪城へと移っていった。


そのため、上様の警護には銀月さんがついていき、総司とあたしは、伏見に残っていた。


「そのときに伏見近くのもののけ軍を動かせるように、俺をここに置いていったんだろ」


総司はお茶を持っても口をつけず、ため息ばかりがその水面を揺らした。


大政奉還以来、上様は諸藩の大名や諸外国との会議でますます忙しくなり、あたしたちとゆっくり話をする時間はなくなってしまった。


その結果、今後の指示をほとんどされないまま、上様は大阪に発たれてしまったのだった。


「結局大政委任されるという噂もあるが、多少の戦は避けられないかもしれんな」


一緒にお茶を飲んでいた斉藤先生が、ぼそりと言った。


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