幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


ビックリして後ろを見ると、総司が刀を持って立っていた。


どうして……?


「死にぞこないの人狼か」


「お前は……絶対に許さねえ!!」


総司は刀を抜き、突然朧に斬りかかる。


風より早いその動きに、朧は切っ先を紙一重で避けるのがやっとだったみたい。


銀髪の先が切っ先に触れ、はらりと水たまりに落ちていく。


「悪いが、これ以上遊ぶ時間はない」


「待て!」


総司はなおも斬り込もうと、ぬかるみを蹴る。しかし。


「いやだね」


朧はそう言うと、降りしきる雨の中に消えてしまった。


「くそ……!いつ俺との決着をつける気だ!朧!」


雨音に負けないように吼えると、総司は急に咳き込み始めた。


「総司、どうして……」


「お前が、ごほっごほ……心配だったのもあったけど……あいつが、戦場に現れるかもしれないと、思って……」


いてもたってもいられなくて、土方さんの制止を振り切り、馬で追いかけてきてしまったらしい。


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