幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


平助くんは洋装だったけれど、その上に浅葱の羽織を着ていた。


京の時代のあたしたちの誇りだった、だんだら模様の浅葱の羽織。


血に濡れたそれを、総司は力任せにつかんだ。


「馬鹿野郎ども……!」


総司は羽織に顔をうずめ、しばらく動かなかった。


その肩に顔をよせると、やっぱり小さく震えていた。


あたしはそっと、総司を抱き寄せる。




平助くん、銀月さん、狼はまだいるよ。


ここに、人間になってしまったけれど、心はずっと壬生の狼のままの……総司がいる。




ありがとう。


あとはあたしが、この最後の狼を守っていくからね。


ありがとう……。




顔を上げると、開けていく空に、まだ星が残っていた。


その中を進んでいくひときわ明るい二つの光を、いつまでも見送った。



< 307 / 365 >

この作品をシェア

pagetop