幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
最終章

言えなくて



明治2年4月。


ついに新政府軍は蝦夷地に上陸。


「江差一帯が征圧されたと」


総司は短くそう言うと、すぐに出陣の用意をするように部下たちに指示を出した。


ついに、新政府軍と蝦夷で衝突する日が来てしまった……。


しばらくは平助くんと銀月さんが亡くなったことに衝撃を受けて落ち込んでいたあたしたちも、そうは言っていられなくなった。


敵は江差から南に向かった松前口、松前と函館の真ん中あたりの木古内口、そして五稜郭の北西の二股口の三方から函館を目指して進撃を開始。


総司率いる土方軍は約130名。


出陣翌日には、天狗岳と台場山を中心とした二股周辺の高台に兵士を配置し、堡塁や塹壕を急造させた。


「お前も持っておけ。もう、忍道具は役に立たないだろう」


そう言って、総司はあたしにも銃を一丁与えた。


新政府軍も、ここで旧幕府軍との決着をつけようとしているだろう。


最新の武器を持って臨んでくるはず。


「敵をぎりぎりまで引きつけて、一斉射撃で仕留める」


五稜郭からありったけの重火器を兵士に持たせてきた総司は、そう言って山の向こうをにらんだ。


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