幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
もう五月。外の陽気は汗ばむほどに温かくて、あたしは女装用の着物でふらふらと出かけた。
軍服だと、もし敵軍に会ったときに危ないから。
はあ、それにしても……本当に温かいなあ……。
あんなに厳しかった蝦夷の冬が、嘘みたいな初夏。
季節が過ぎる速さを感じながら、ふらつく足で歩く。
すると、突然足元の地面がくらりと歪んだ気がした。
「あ……」
ふんばることもできず、その場に膝をついてしまう。
地面だけじゃなく、周りの景色も歪んで見え、吐き気を覚えた。
「楓?楓だろ?」
突然名前を呼ばれる。
そちらを見る前に、意識が遠くなっていった。