幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


「ここぞってときは、やっぱりコレだろ」


ところどころ血で汚れて穴の開いたそれは、ガトリング機関銃の前に倒れた平助くんのものだ。


池田屋に斬り込むときも、みんなでこの羽織を着たっけ。


それが一枚あるだけで、新撰組のみんなの魂が、あたしたちを守ってくれているような気がする。


きっと総司も、同じ思いなんだろう。


あたしたちはうなずきあうと、部屋をあとにした。



会議室に集まった幹部たちは、次々にやってくる情報を整理していた。


「敵はどのように攻めてきている?」


「土方くん。非常に悪い状況だ。函館山が占拠されてしまったらしい」


大鳥さんの言葉に、総司は顔色を変える。


函館山は五稜郭の南西に位置している、山頂からは函館市内が一望できる山だ。


それでいて海にも近く、この五稜郭と函館山近くの弁天台場にほとんどの戦力が集結している旧幕府軍にとって
は、制圧されてしまってはとても不都合な山だった。


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