幕末オオカミ 第三部 夢想散華編

夢想散華



明治2年5月11日。



眠っていたあたしたちの部屋のドアが、突然ドンドンと叩かれた。


びっくりして目を覚まし、時計を見るとまだ夜明け前だった。


「何事だ」


総司が寝間着の上に羽織を羽織って出ると、息を切らせた五稜郭の兵士が言った。


「総攻撃が始まりました。敵の軍艦から一斉射撃され、それを合図にひそかに上陸していた新政府軍が進軍を始めた模様!」


「なんだと。すぐに行く」


兵士が礼をして立ち去った後、総司は着物を脱ぎ、手早く洋装に着替える。


ついに、この日が来てしまった──。


あたしも総司に置いていかれないよう、慌てて支度をする。


「あっ、それって……」


着替えを終えた総司を見て驚いた。


その腰に、見覚えのある羽織が袖の部分を利用して巻き付けられていたからだ。


浅葱色の、だんだら模様の羽織……。


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