幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「……もう、俺が何を言ってもムダなんですね」
総司も寂しそうな瞳で、二人を見つめた。
「どうか……二人とも、お元気で」
「ああ!」
「いつかまた、会えるのを楽しみにしてるぜ」
湿っぽくならないようにか、二人は軽く挨拶をして、行ってしまった。
まるで、またすぐに会える約束があるかのように。
「っく、う……」
二人の足音が聞こえなくなると、涙が自然に溢れてきた。
決して切れない絆が、新撰組にはあると信じていたのに。
まさか、あの二人が離れていってしまうなんて……。
信じていたものが、足元からがらがらと崩れ落ちていく。
鳥羽伏見からずっと、あたしたちはゆっくりと奈落に落ちていくみたい。
「仕方ねえよ……。離れ離れになるけど、敵になるわけじゃない。俺たちの気持ちは、きっとどこかでまだつながってる」
「そうだね……」
離れてしまっても、心はどこかで繋がっている、か……。
ぐすりと鼻をすすると、総司はあたしの手を強く引き、灯篭の影に連れ込む。
そこで、ぎゅっと抱きしめてくれた。
あたしも総司の背中を抱く。
倒れてしまいそうなお互いを、支え合うように。