幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「簡単に言えば、近藤さんのやり方についていけなくなったってことかな。
あの人のことは今でも嫌いじゃねえが、このまま新撰組にいても、俺たちが望む戦い方はできねえんじゃないかと思ってよ」
永倉先生は星が瞬く空を見上げた。
そういえば勝沼での戦いの前、永倉先生は近藤先生に相当腹が立っていたみたいだった。
結果、やっぱりぼろ負けして、隊士に死傷者が出てしまった。
だから、もうついていけないと思ったのかな。
「動揺していた隊士たちを鼓舞するためとはいえ、会津から援軍が来るなんて嘘まで言われちゃあな。
それに怒りもあるし、失望もある。
でも一番大きいのは、自分の心のままに働きたいって思いが膨らんじまったってことだな」
原田先生はさらりと言うと、あたしの頭をぽんと撫でた。
「総司と仲良くな。お前たちのガキが見られなかったのが心残りだよ」
そう言って、いたずらっぽく笑う。
「こんなときに、何言って……」
反論しようとしたら、涙が溢れてきた。
入隊したときからずっと見守ってくれて、祝言のときもお祝いしてくれて……二人のあたたかい優しさに、どれだけ助けられたことだろう。
おちゃらけたふりして、他人を明るくしてくれる、二人がいなくなってしまうなんて……寂しすぎるよ。