暴走族に愛された不登校女子。
-6年前-
「静くんっ!」
「杏…僕、その呼び名嫌いなんだよね」
蒼太の友達の、静くん。
大人しいけど自分の意見をはっきりと持っていた人だった。
静くんも小さい頃苛められて、蒼太に救われたという。
あたし達の6年前は、静くんが転校してしまう年だった。
確か…10歳のとき。
「ねぇ、何でいやなの?」
「何か…女っぽいもん」
「ずっと呼んでるじゃんか」
「……まぁいいけど」
静くんは実を言えば、素直じゃない一面も持っていた。
頬を赤くして、口元を手で隠す仕草。
これが彼の特徴で、素直に言えないときの仕草なのだ。
「今日も丘の上行こうよ!」
「いいね」
蒼太も後ろから来て静くんと賛成していた。