暴走族に愛された不登校女子。
静くんに笑顔を見せると、優しく口元を緩めてくれた。
「…杏はさ。怒ってる? 連絡しなかったことを…」
「正直怒ってた…。だけど何かあったんでしょ?」
あたしには分かるから。
静くんは昔から嘘をつかないし裏切らない。
だから理由があったに決まってる。
「……僕が転校した理由のせいで出来なかった」
「転校の理由……」
「僕は祖母に引き取られた。だけどその祖母は数日で亡くなってしまった。それで、母さんの従弟に引き取られた。
でもそこでは、外に出ちゃいけなくて…。
手紙を出すことも、携帯を持つことも許されなかった。
だから……連絡取れなかった」
静くんの瞳には、悲しげな思いしか浮かんでいない。
あたしは胸が痛く感じた。
「もう……大丈夫だよ。話してくれて、ありがとう」
頬に温かい涙が零れ落ちた。
静くんはあたしの知らないときに辛い思いをしていた。それは友達として、本当に辛かった。