暴走族に愛された不登校女子。
そのまま、直樹たちのバイクは止まらず道を進んでいく。
(それにしても速いなぁ…)
くるくる変わる景色をぼんやりと見ていた。
「杏? 起きてるか」
「寝ちゃ駄目でしょ」
「だよな」
時々、直樹はあたしが後ろにいるか確認してくる。
あたしはちゃんと抱きついているのに、いつも不安げだ。
(だったら速度を落として欲しいものだよ…)
智さんのバイクが前を走っていて、綺麗な金髪が風でなびいていた。
(髪を染めるのが不良の定番だけど…、直樹の髪は地毛に見える…)
静くんの事や、智さんの事。
いろんな人が苦しんでいる。その過去はきっと重たくて辛いものだ。
(それなのにあたしは逃げてばかりだ…)
現実から逃げたくなって目を閉じようとしたけど、眠ってしまいそうだから何とか耐え抜いた。
そして着いた先は予想通りの場所だった。