前編 かすみ草の恋 ー大学生編ー
山田礼二
朝、駅を降りるとすれ違う人たちからの視線を感じる。


いつもは若い男のイヤラシイ目がミカに向いてて


女たちがジロジロ俺を見るんだけど


今日に限ってはいろんな目が俺たち2人を見るんだ。


そこへ、ちょっと小生意気な5才くらいのチビッコが俺らにその訳を教えてくれた。


大通りを走るバス
ショッピングモールの大きな広告欄
高層ビルのこれまた大きな広告欄
とにかく、周り中に俺たちの写真が飾られていた。


まるで、街全体がこの写真にジャックされているような感じだ。


ミカが俺のスーツの襟を引き寄せて
背伸びしてキスしてる写真。
俺もミカの腰あたりを持っていて
自分の方に引き寄せていて
バッチリ応えてるけどな(笑)

ミカの長いまつ毛が印象的で

自分で言うのもなんだけど

すんごく、上手く撮れてる。


俺もミカも撮られてるなんて意識してないけど、すっげぇいいモデルに見える。


きっと、このカメラマンは凄く腕が良いんだなと感心する。


見せ物になるのはガキの頃から
嫌で嫌でたまらなかったけど


ミカとならいいかなって
心の底から思えた。


でも、モデルになるということは


ミカ意外の女とも絡まないといけないものなのか?


逆にミカは他の男と絡むのか?


他の専属モデルもいるだろうし…


その点、ハッキリしてもらって
新たに契約書を書き直さないと
ミカが丸め込まれたとしても、俺はこの話を白紙にするつもりだ。


俺はミカを教室に送った後
自分の教室に入るまで


そんなことを考えていた。
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