怖がりな君と嘘つきな私
「しばらくここで潜伏する?」

私は間違いなくナルを甘やかしている。自覚はある。

「おん。」

喉の奥で返事をして、ナルは嬉しそうに私の胸に鼻をこすりつけた。

「もし。」

ナルの背中をあやすようにトントンと軽く叩きながら、小さな声を出した。

「宇宙からその…侵略者?…がきたらね。」

「…うん。」

ピクリとナルの体が緊張する。

「そしたら、私はじたばたしないで、ナルと一緒に死んであげるから。安心してね。」


本当は、私はナルを守るためなら、あっさり一人や二人、殺してしまえると思うのだけど。

だって、私はナルの言うところの普通の人だから。

だけど、怖がりなナルのためなら、一緒に死んであげる。


「ほんと?」

泣きそうな顔でナルが私を見上げる。

「ほんと」

これからも、たくさんたくさん甘やかしてあげる。
ナルが怖いものや、クソみたいなものに、なるべく出会わずにすむように。

「花穂。やっぱり今日、モンゴリアンチョッパーズ行くのやめて。あいつら、モッシュとかダイブとかするから。」

「わかったよ。」

あぁ、やっぱり。

私はきっといざとなったら、ナルを守るためにあんなことやこんなことをしちゃうだろう。

私はナルみたいに強くないから。


今度、一人でそのトム·クルーズの映画を見てみよう。

ナルのきれいな金髪頭を抱き抱えながら、そう思った。




end

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