掠れた声で囁いて


 事情を聞かれた私はすぐに放免された。泣き顔の女子高生の相手なんてめんどくさかっただろうに、駅員も警察も優しく対応してくれた。ほんとありがたい。
 後日また改めて連絡するとのことだった。

 今から高校行くのも辛いので、今日は帰ってもう寝るのみ。怖いとか言ってたら、全く出かけられなくなってしまう。


「えと……私一人で帰れるので……」

「気にしなくていいよ。俺が会社休みたいだけなんだから」

「いや、気にしますよ……」


 相模さんは有給溜まってるんだ。と笑いながらけーくんをあやしていた。


「休め休め言われてたから丁度いいよ。会社に遅れるって言ったら、皆して是非休んでください!だってさ」


 やれやれと肩を大袈裟にすくめる姿にくすりと笑ってしまう。


「……慕われてるんですね」

「どこが?」


 ガラガラの電車内で並んで座る。若干浅く座った相模さんは苦笑してそんなことを言っていた。
 その低い声!耳元で囁かないで欲しい。


「……だ、だって、嫌ってる人が遅刻してくる時に休めなんて言いますか?……ちゃんと出社してこいとか一瞬でも考えません?」


 挙動不審になりながらも、言い切る。
 相模さんはほんのちょっと考えてから、そうかもなぁと笑った。思ったことがないのが簡単に分かってしまう。
 そんな風に思わない人だから皆に慕われているのだろうか。


「……やっぱり相模さんはいい人ですね」

「ん?」


 なんでもないです、と笑うと相模さんはもう一度聞くことはなかった。



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