よくばりな恋
ポーンという軽い音が鳴って、エレベーターの扉が開く。
「翠?」
今一番会いたくて、会いたくない人がそこに立っている。ふと横を見ると、長身の彼の横に立ってもつりあいのとれた、スラリとした女の人。栗色に染めた長い髪を後ろで1つにくくり、毛先はきれいにカールしている。コートを腕にかけグレーのパンツスーツに黒いバッグ、きっと有能なキャリアウーマンなんだろう。
それが誰なのか、聞かなくてもわかる。
「それじゃ海斗、また夕方おじいさまのとこに顔出すから」
「わかった。その頃には処置も終わってるだろうから和沙にも説明する」
「・・・・・っとゴメンね。デカイの2人が前にいたらエレベーター出られないわね」
「いえ、大丈夫です」
十分に酸素が身体に入ってこないような気がするのに、それでもかろうじて口角を上げた。