よくばりな恋


検査も異常なしで、ただの脳震盪だったようだ。手のひらの傷は、斯波先生ではなく他の先生が消毒してくれた。当直明けで帰ったことを伝え聞いた。

退院のお許しが出て会計を済ませる。


「翠ちゃん!」

ちはやさんが追いかけて来て、病院の職員用出入口を出たところでつかまった。

「ひとりじゃ心細いでしょ、ウチにいらっしゃいって奥様から電話あったわよ」

にっこり微笑んでお断りする。

「大丈夫。院長先生に1週間ほどゆっくりしなさいって休暇いただいたし、実家に帰ります」

「でも実家でもひとりやない」

「うん。でもこっちでひとりより寂しくないから」

「・・・・・・・・・・海斗くんは?」

首を横にふる。

「カレシでもないのにそんな甘えられません」
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