よくばりな恋
まだ寝ている成海先生と紗英を起こさないように家を出る。鍵は寝る前に成海先生が玄関に置いてくれていたので閉めた後にドアの新聞受けから中に入れておいた。

「車、まわしてくるしエントランスで待ってて」

かなり飲んだだろうし、睡眠時間も短いだろうに全然そんな気配も見せず足取りも軽やかに駐車場へ向かう。ほんの少しの時間とはいえ男の人とドライブなんてしたことあったかなあと考えて、ちょっと焦る。

ほどなく目の前に静かにパールホワイトの車が止まった。あまり車に詳しくないわたしでも知っている国産のハイブリッド車だ。

「どうぞ、乗って」

斯波先生が助手席の窓を開けて声をかける。

「お邪魔します」

乗り込むとすぐに音もなく発進した。

「なんかおかしいか?」

「てっきり外国の大きい車想像してたから意外でした」
素直に感想を口に出してしまう。

「オレ、基本横着やからな。実用的なモノが好き。ガソリン入れに行く回数少ない方が楽やろ。左ハンドルも邪魔くさいし」
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